とりあえず、一番言いたいことは
「たかが尿酸、されど尿酸。やっぱりキチンと尿酸値は下げておきましょう」
につきるのですが、その裏付けとなる報告をご紹介しましょう。
まず、痛風というのは尿酸値が上がって関節にたまり炎症を起こす病気のことをいい、昔から「風が当たっても痛い」ということから「痛風」という名前になったそうです。割と尿酸値が高い人はたくさんいますが、コレステロールや中性脂肪ほど下げろ下げろと言われないのが現状で、大多数が「まあちょっとくらいは高くてもいいか」くらいの認識でしたし、私も7前後ならオッケーだろうと思っていたのですが、最近痛風発作を起こす患者さんが来られることが増えたので、色々調べておりました。
尿酸値が高いと、腎結石(尿路結石)になる人も多く、なった人いわく「ガリガリという感じですごい痛みが背中から腹に動いて、石が膀胱に落ちると何事もなかったように痛みが消える」らしいです。でもそのまま放置しておくと、腎臓の中に、腎結石として結晶化してしまいます。そうなると腎臓が正常に働くのを邪魔します。
一方、「慢性腎臓病」というのは、高血圧、糖尿病などで腎機能が徐々に低下していく病態をいいますが、あらたに病状を悪化させる疾患の中に「痛風」が入る可能性が報告されました。
(以下、転載。むずかしい統計解析の箇所などは省略)
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社会経済的地位、喫煙状況、併存疾患(糖尿病、高血圧、高脂血症、心不全、末梢血管疾患、早期~中期の慢性腎臓病、一般腎疾患、急性腎障害、肝不全および肝疾患、肥満、薬物中毒)、薬剤(非ステロイド抗消炎薬、経口ステロイド薬、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬、その他の利尿薬、スタチンおよびアスピリン)の使用状況などを調整後に解析したところ、痛風の罹患により慢性腎臓病の進行リスクが29%有意に上昇した。(中略)この報告をした人達は、「痛風は、慢性腎臓病の進行の独立した危険因子であることが示された。今後、痛風を適切にコントロールすることで慢性腎臓病の進行リスクを抑制できるかどうか、さらに研究を重ねる必要がある」とコメントしている。
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まあ、この報告は「後ろ向き研究」といいまして、後からデータを色々加工していて、最初からそのつもりでデータを集めた「前向き研究」に比べると、科学的信頼性としては少し劣ると言われていますが、この方達はしっかりとした解析をしており、この報告は、有名な内科系の論文雑誌に載りました。
腎臓は一度病気になると治りにくい臓器ですので、皆さん注意しましょう。